セールスや営業などのビジネスに携わる人、もしくは役職の人が立場を紹介する時など、普段、当たり前のように使用しているのが『名刺』。でもこんな疑問ありませんか。
- 名刺に決まったサイズはあるの?
ビジネスパーソンならパッとサイズがイメージできるかと思いますが、実は暗黙のルールで統一されているんです。最近では簡単に名刺を自作できるアプリが出てきているので、疑問に感じる方もいるでしょう。そこで今回は名刺のサイズにまつわるルールや背景、どんな共通認識があるのかを紹介します。
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スタンダードサイズは「91×55mm」
『名刺サイズ』の規格として一般的にセレクトされているのが『91×55mm』のもの。ここ日本では「4号」と呼ばれるサイズになります。ただ、この「4号」という呼称は関東圏でのお話で、関西圏になると「9号」になります。それぞれ「東京4号」「大阪9号」として定着しているサイズで、移動や出張などで各地域に赴いた時には注意したいポイントですね。
この「東京4号」と「大阪9号」の違いですが、特に意味はなく、当時の用紙メーカーさんがそれぞれ「うちは4号」「こちらは9号」と呼んでいただけのものが今まで綿々と引き継がれているようです。どちらも『91×55mm』のサイズなので、呼び名が違うだけ。コーヒーに入れる生クリームのことを「ミルク」と呼ぶか「フレッシュ」と呼ぶかの違いのような。それだけでなんとなく出身地がわかる感じがしますよね。
サイズには秘密が隠されている
では、そもそも『91×55mm』というサイズは、なぜここまで定着したのでしょうか。「100×50mm」とか「90×60mm」とか、キリのいい数字の方が覚えやすいし、だいいち「91mm」と「90mm」の「1mm」の違いって、そんなに大きなものには思えない。
現在のカードタイプの『名刺』の起源を辿ると19世紀フランスまで遡ります。その頃、写真付きの『名刺』が登場し、それを製作していた写真家のディスデリという人物が「82×57mm」というサイズの『名刺』で特許を取得しました。日本の名刺文化はヨーロッパから伝わってきたとされているので、このサイズが今のベースになります。
しかし、「mm」や「cm」といったメートル法が日本で本格的に定着し始めたのは昭和も戦後になってからのこと。それまでは尺貫法が主流でした。「一寸法師」の「一寸」であったり、業界人が「尺が長い」と言ったりする、アジア圏独自の長さの単位のことです。素直に「82mm」を尺貫法にすると「約2寸7分」と非常にキリの悪い単位になります。だったら「3寸」でよくない?ということになり、「3寸=90.9mm」が採用されたのです。
では、「55mm」も同じ原理かというと、そこには美的感覚が入ってきます。キリのいい数字を選ぶなら「57mm」に近いのは「2寸=60.6mm」ですが、そうするとなんか野暮ったい印象があります。『名刺』なんだから、やっぱり渡す時にはカッコいいものがいいじゃない。シュッとしているものがいいじゃない。そこで導き出されたのが「黄金比」です。
ピラミッドやパルテノン神殿などの建造物、レオナルド・ダ・ヴィンチの「モナリザ」など、黄金比が採用されているものは数多くありますが、それらは全て対象物を美しく感じる感覚に沿わせたものです。「Google」や「Apple」のロゴのように意図的にデザインされたものもありますが、「黄金比=1:1.618」という対比は、人類が古来より美しいと感じるサイズなのです。
そこで導き出されたのが「3寸」に1.618を割った「1寸8分=55mm」というサイズです。当時、こんなデザインの計算がされていたかどうかはわかりませんが、これを美しいと感じる感覚は、印刷技術が発達した明治の時代でも変わらなかったのです。
メリットがたくさんあるからスタンダードになっていく
ビジネスマナーの5原則として、新人さんなどに徹底的に教え込むのは「挨拶」「表情」「身だしなみ」「立ち居振る舞い」「言葉使い」。これらは基本的に相手に対しての印象をよくするためのものでもありますが、それは相手に失礼を起こさないためのものでもあります。
その点では『91×55mm』サイズは、『名刺入れ』や『名刺ホルダー』などのビジネスアイテムにも普及しているサイズですので、自分自身が持ち運んだり管理したりするのはもちろん、受け取った相手も『名刺入れ』に仕舞いやすい、『名刺ホルダー』で管理しやすいという、相手に失礼を起こさない対応になります。
また、名刺を注文する際にもスタンダードサイズであれば取引もスムーズですし、余計なコストがかかることもありません。自作でプリントするにしても、シートの種類が豊富であったり、フォーマットやテンプレート・デザインが多種多様に揃っていたりしますので、余計な手間ひまをかけずに済みますよね。
国によっても違う、様々なサイズの『名刺』
とは言え、全部が全部『91×55mm』なのかというと、決してそうではありません。『名刺サイズ』にこうでなければならないという決まりはありませんので、好きに自由に選ぶことができます。とくにグローバルに仕事をされている方ですと、欧米で使用されている『名刺』が日本のサイズと違うこともご存じだと思いますし、先方にサイズを合わせるというのも、相手を慮る日本人らしいビジネスの方法かもしれませんよね。
では、どんなサイズの『名刺』があるのか、少し見ていくことにしましょう。
名刺3号(85×49mm)
女性向けとして普及している、名刺4号より一回り小さいサイズのもの。通常よりも小ぶりなので可愛らしい感じです。四隅の角を丸くした角丸加工タイプのものは、さらに優しく柔らかい印象。親しみやすさもあり、美容室やネイリストさんなどに人気。お財布などに仕舞いやすいサイズということから、ショップカードやスタンプカードとしても幅広く活用できます。
欧米サイズ(89×51mm)
日本の『名刺サイズ』の基準が尺貫法になっているように、欧米の『名刺サイズ』もヤード・ポンド法が基準になっています。そのため「3.5×2インチ」という『91×55mm』よりほんの少しだけ小さいサイズになります。昔は特別注文サイズでしたが、最近では取り扱う業者さんも増えてきて、よりデザイン性を重視したビジネスカードとしての需要が増えています。
名刺5号(100×61mm)・名刺6号(115×70mm)
通常サイズよりも一回り、二回り大きくなった大型名刺と呼ばれるサイズ。一般企業でお目にかかることはありませんが、例えば、大企業の重役さんや、議員さん、寺院などの住職さんなど、権威や格を印象付けたい時に使用されることがあります。会社やお店の宣伝としてDMやノベルティに同封するなどといった使い方もできますね。
サイズだけじゃない、用途も様々な『名刺』
『名刺』はその人の分身なんて言われがちですが、であれば、その人となりを知ってもらうために名前や会社名・肩書だけではなく、もっと他の情報も載せたいところですよね。『91×55mm』サイズですぐにできるのが裏面まで使うこと。比較的多くみられるのが、表は写真や似顔絵などを入れた個人の情報、裏面には会社情報を記載するというもの。これでどこの会社のどんな人でどんなサービスがあるのか1枚のカードで伝えることができます。
その応用として「二つ折り」というスタイルもあります。『91×55mm』を縦や横に2枚につなげたものを折り曲げて使用するものです。単純に記載できる情報が倍になりますので、その人の趣味や人柄、会社情報も多く伝えることができます。しかし、折り曲げることで『名刺』がかさばってしまうというデメリットも。
中には「三つ折り」スタイルを採用される企業さんもあります。こちらはほぼ「名刺×企業パンフレット」の役目になりますので、その情報量は圧倒的ですし、コンパクトにまとめられるのも便利です。ショップなどでは折り曲げることで中がわかりにくくなるのでスタンプカードや予約カードに使われるところも多いですよね。
相手のことを思いやるのがビジネスマナー
いろいろなサイズの名刺、いろいろなスタイルの名刺がありますが、ひとつ気をつけたいのは自己主張が強すぎると相手に失礼になってしまうという点です。お土産も大きければ単純に相手が喜ぶという訳ではないのです。大型名刺の三つ折りでドーン!と大アピールするのもいいかもしれません。相手に印象付ける存在感は抜群ですよね。ですが、『名刺』は『名刺』。自己紹介のビジネスツールでしかありません。受け取った相手が『名刺入れ』に仕舞えない、持ち帰っても『名刺ホルダー』からはみ出して管理できない、そんなことになってしまったら本末転倒です。あえて、そこを狙うという豪胆な方もいらっしゃるかもしれませんが。
そういう点でも『91×55mm』サイズは、ビジネスパーソンの中では暗黙の共通認識になっています。『名刺』を大切に扱うのもマナーですが、そこから広がる人脈というのは人対人のコミュニケーションから生まれてくるものです。そのきっかけ作りとしての『名刺』には、先人たちの美的感覚が備わっていますし、そのデザインが普遍的であるからこそスタンダードサイズとして広く使用されています。
そんな『名刺』のやり取りが、将来につながる素敵な場になるように心掛けていきたいですね。
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